『ウズベク語初級 ウズベキスタンへの招待』

伊達 秀『ウズベク語初級 ウズベキスタンへの招待』(星雲社,2008年,199頁+CD,2400円)が出版された。
中央アジアと日本の相互理解を深めるには,現地の言葉を理解することが重要とよく言われています。それで中央アジアの言語を学んでみようと思って,書店の語学の棚を捜してみると。初級用の教科書,文法書,辞書がほとんどないのです。アジアが大切な時代と言われて久しいのに実態はこのようなものです。
日本の中央アジア学研究は,歴史学を中心に長い伝統と蓄積があって,優秀な研究者たちは世界の学界にも大きな影響を与えてきました。中央アジアに関心のある人たちへの裾野を広げるという努力は余り行われてこなかったかもしれません。
ソ連崩壊後,中央アジア諸国が独立し自立すると,日本政府はウズベキスタンを重視する政策をとりました。確かに,公的なレベルでの相互交流は増えました。また,直行便就航でウズベキスタンを訪問する観光客も増加しました。ウズベキスタンに関心のある人が増えていることは間違いないと思います。しかし,もっと理解を深めるためのツールは増えてはいません。
ウズベク語に関して,いままで『ウズベク語辞典』(泰流社)などがわずかに出版されましたが,出版社が倒産したため絶版です。
今回出版された初級文法書は,発音を理解するのにCDが付属しています。奥付の著者の履歴を拝見すると,中央アジアの専門家ではありません。ウズベキスタンに長期滞在し,ウズベキスタンをもっと知ってもらいたく,そのために現地の人とのコミュニケーションが大切だとの思いから文法書を出版しました。著者の努力に敬意を表したいと思います。
文法書はキリル文字ラテン文字の両方で記されています。現地のウズベク人専門家も目を通しており,例文はしっかりしたものです。
もしタシケントを旅行する機会があるならば,次の書籍を購入されることをお勧めします。
鈴木麻矢『ウズベキ語・日本語フレーズブック(Uzbekcha-Yaponcha suzlashgich)』(Toshkent, Yazuvchi)
伊藤氏の文法書と鈴木氏のフレーズブックを併用すれば,より一層の学習効果があがると思います。
日本には優秀な中央アジア研究者がたくさんいます。中央アジア諸語(カザフ語,ウズベク語,トルクメン語,タジク語,キルギス語など)の初級文法書,辞書を作って頂きたいと思っております。

ウズベク語初級―ウズベキスタンへの招待

ウズベク語初級―ウズベキスタンへの招待