トルコについてのウィキリークスによる米国外交文書の暴露

11月29日付トルコ現地各紙によると、トルコに関するウィキリークスによる米国外交文書の暴露に関して、次のような報道があった。

1. 28日、ウィキリークス・ウェブサイトにより入手され、米ニューヨーク・タイムズ紙、仏ル・モンド氏、西エル・パイス紙、独デア・シューピーゲル紙が報じた米国外交機密文書の内容のうち、トルコに関し注目されるものは、以下の通りである。公正発展党(AKP)政権のイスラム的傾向に関する否定的評価が目立つ。

(1)トルコでシャリーアが導入される可能性は低いが、イスラムへと傾斜しており、EU入りは十中八九不可能である。このため、トルコの同盟国としての信頼性にも疑問符がつく。

(2)エルドアン首相は頑固、過敏で、非常に権威的な統治を行う父権主義的な人物。また、完璧主義者だが独裁者ではない。彼の弱点は、自信過剰と計り知れない貪欲さである。

(3)AKP幹部のかなりの部分は、何らかのイスラム教団に属し、エルドアン首相もイスラム主義的なアジェンダを有している。また、同首相は、イスラム系銀行家を多くの重要ポストに任命している。エルドアン首相は、情報のほぼ全てをイスラム系新聞から得ており、側近のアドバイザー達はおべっか使いと横柄なもので固められている。

(4)ダーヴトオウル外相は、エルドアン首相を通じてイスラム的影響力を行使している。ダーヴトオウル外相は特に危険な人物で、そのネオ・オスマン主義的ビジョンが危惧される。また、同外相は、アンカラの視野を越えた国際政治をよく分かっていない。

(5)AKP顧問の一人は、1683年のウィーン包囲のリターンマッチを行い、アンダルス(イベリア半島イスラム勢力の旧領土)を取り返すつもりだと述べた。

2. 29日朝、訪問先のリビアへの出発前、記者会見を開いたエルドアン首相は、ウィキリークスの暴露について聞かれ、「まず暴露の背景を知る必要がある。ウィキリークスの信頼性には疑問もある。その後、我々は評価を行い、必要な発表を行う」と述べた。

米国外交官の国家機密という外交文書は、中味のない、ゴシップ・レベルの会話が記載されているに過ぎない。この暴露文書を読んで、米国外交官のトルコ蔑視がよく分かった。このようなトルコ蔑視は米国だけではなく、欧州の人々の見方にも近い。トルコが台頭すると、欧米は警戒すること以外に何も思いつかないのだろうか。

このような外交文書は暴露されても、米国国務省が機密漏洩でさほど驚かないのも、大した内容ではないからであることがよく分かった。多分、本当の意味での国家機密は、トルコに関して漏洩していないのかもしれない。