回教研究所 『初等トルコ語読本』


初等トルコ語読本』(回教研究所発行、昭和15年)

昭和8年10月、大久保幸次らが中心となって「イスラム学会」が設立され、トルコ語講習会が開催された。トルコ語学者の大久保幸次は、「回教圏研究所」を設立し、雑誌『回教圏』などを出版し、回教圏(イスラム世界)を研究した。

この回教圏研究所がトルコ語学習者用に『初等トルコ語読本』を出版した。現在、多くの日本人観光客がトルコを旅行し、トルコがブームとなっている。トルコの社会や文化に対する関心が高まり、トルコ語学習者が増えている。東京外国語大学大阪大学(旧大阪外国語大学)にはトルコ語学科があり、その他の大学にもトルコ語講座が開かれている。

トルコ訪問がトルコ語学習への契機をなっている現代と比べると、トルコに関する情報が少なかった昭和戦前期に、このような書籍が出版されたことは驚きである。この本の出版の前には、内藤智秀が編んだ『土日・日土大辞典』が日本初のトルコ語辞典、『土耳古語会話』が出版された。トルコ語文法だけが出版されなかった。。トルコ語学習の環境が整えられつつあった。

しかし、残念ながらトルコ・ブームは長くは続かなかった。この後に勃発する「大東亜戦争」そして敗戦によって、トルコへの関心はごく少数の研究者を除き消滅した。イスラムやトルコに対する関心が再び高まるには長い時間がかかった。

この本も忘れられたトルコ関係の書籍である。