トルコ・アルメニアの国交樹立(続)

今月10日,スイスでトルコ外務大臣アルメニア外務大臣が米国務長官,露外相,EU代表,スイス外相の立ち会いで国交樹立の議定書に署名した。トルコとアルメニアの国交が正式に樹立されるのは両国議会において,この議定書が批准されて正式に発効することになる。

トルコはアルメニアディアスポラが多く住む欧米から《オスマン帝国人のアルメニア人の大量虐殺》の謝罪を求められてきた。トルコは同じ時期に多くのトルコ人が殺されていると,常に反発してきた。トルコは,1960年代や70年代にトルコの外交官多数がアルメニア過激派に殺害され,それについては常に不問にされてきて,トルコが一方的にが批難されるのを我慢できなかった。トルコにとって,アルメニアと国交を樹立しなくても困らないという自負心があった。実際,経済的にアルメニアは困難な状況にあって,トルコとの国境を開いて欲しいという切実な願いがある。トルコとアルメニアには国交はないが,アルメニアの航空会社がイスタンブルに乗り入れ,多くのアルメニア人がイスタンブルを訪問している。これに対して,トルコ人はほとんどアルメニアを訪問しない。経済面でアルメニアがトルコを必要としている。しかし,海外のアルメニアディアスポラは,この現実をしらなく,いまだにトルコを敵視している。

トルコは今回の国交樹立議定書を署名するため,欧米に対して譲歩をしている。トルコとは親密なアゼルバイジャンの反対を押し切っている。アゼルバイジャンアルメニアナゴルノ・カラバフ紛争で領土紛争が継続し,アゼルバイジャンの立場からすれば,アルメニアによってナゴルノ・カラバフが占領されている。アゼルバイジャン国民は,今回のトルコがアルメニアと国交樹立したことに落胆と憤慨している。トルコ政府は,アルメニアとの国交樹立に舵をきった。トルコの与党AKPは議会で多数の議席を占めているから,議定書の批准は,最終的に承認されるであろう。

今回の批准に関して問題なのは,アルメニア側である。議会が与野党でこの問題で紛糾するであろう。もし,アルメニア議会が批准を否決したならば,トルコはメンツを潰されたことになり,両国の和解は困難になるであろう。トルコは欧米の外交当局に貸しをつくったことになるであろう。いまや,トルコは地域の大国としての自負心があるから,今回のアルメニアとの外交関係が樹立されなくても困らないという態度を示すに違いない。