トルコ・アルメニアの国交樹立

スイス・チューリッヒでダヴトオール・トルコ外相,ナルバンジャン・アルメニア外相が両国の国交樹立に関する署名をおこなった。この式典をクリントン国務長官,ラブロフ露外相,EU代表などが式典を見守った。式典を終了してトルコ外相は微笑をもらし,アルメニア外相は硬い表情であった。

両外相の表情が今回の両国の外交関係樹立において,両国の力関係を示しているとも言えよう。トルコが経済発展を続け,中東地域の地域大国として,政治・経済面で強い発言力を確保しつつある。それに比べると,内陸国アルメニアは経済的は発展に取り残されている。欧米にいるアルメニア人のディアスポラは,アルメニア支持を言っても,実際に資金面で本国アルメニアを支援することは少ない。ロシアもアルメニアをCISの一員として庇護する立場を取りながら,実際には支援することも大きくはない。

今回の国交樹立の署名が終わっても,議会で承認されるかどうかまだ分からない。今回の国交樹立に関して,欧米が後押ししたことは確かであるが,アルメニアというよりもトルコを自分たちの味方につけておきたいという思惑があった。それだけ,トルコの地政学的な重要性が高まっていることは間違いない。米・露・欧州は,アルメニア・トルコの歴史認識を利用しながらも,自分たちの利益に結びつけるため,外交を現実的に進めていることを,今回の国交樹立式典で見ることができた。

私たちがアジアの外交で応用すべきは,二国間外交ではなく,このような多国間外交を利用しつつ,日本の国益を守ることを身につけることではないだろうか。