キルギスの公立マドラサ(宗教学校)

キルギス共和国南西州バトケン地区に公立のマドラサ(宗教学校)がキルギス政府公認で開校した。

バトケン地区に関して,今では忘られつつあるが,1999年8月JICA専門家の日本人4名がイスラム武装勢力によって拉致され,2ヶ月間の交渉の末に解放された。中央アジアで日本人がイスラム武装勢力に拉致された最初の事件となった。この交渉では,ペルシア語に堪能なウズベキスタン大使館の高橋博史参事官が尽力しているが,彼の活躍については知られることはない。ウズベキスタン大使の中山恭子大使(当時)も高橋博史さんが活躍したと言っていたが,日本のマスコミが伝えることはなかった。

日本側は身代金を払っていないと言っていたが,現地イスラム勢力の仲間割れから,身代金を支払っていることが後に明らかになってしまった。しかし,日本側はいまでも支払っていないと言っている。日本人の人質事件や拉致事件が起きないためにも,このような態度は仕方がないかもしれない。どこでもそうだと思うが外国で仕事をするに際して,現地情報を収集することは非常に大切だ。その点,拉致事件に巻き込まれたJICAはいまでも中央アジアでしっかりとした,現地情報を入手しているのだろうか。

バトケン地域はイスラム武装勢力,部族勢力など争い,軍閥が群雄割拠するような場所であったが,いまでは比較的落ち着いている。しかし,アフガニスタンからの麻薬の密輸ルートであることには変わりない。群雄割拠はなくなったが,キルギス政府がコントロールできないマドラサがあり,そこでは過激な思想が教えられている。キルギス政府は政府がコントロールできるイスラムにしたく,バトケンに公立のマドラサを開校した。私立のマドラサに政府は閉鎖命令をだした。

キルギスの首都ビシュケクではなく,首都から遠いバトケンに公立のマドラサが開校する必要があるのは,バトケンに政府のコントロールがきかないイスラム勢力がまだあることを示している。これらイスラム勢力がマドラサに使う経費はいったいどのようにまかなっているのか興味深い。