『維吾尓語基礎教程』(中央民族大学出版社)


阿孜古麗・阿布力米堤編著『維吾尓語基礎教程』(中国北京,中央民族大学出版社)

日本では,ウイグル語を学ぶ理由はいろいろあると思う。新疆を旅行して,ウイグル人と知り合いウイグル文化をもっと理解するため学習する人,新疆の歴史に関心があるため,ウイグル語を学ぶなど動機はさまざまであろう。日本は東アジアでも不思議な国である。ウイグル語を学ぶ人,ウイグルの文化,音楽などさまざまなことに関心がある人が多くいる。ある時はシルクロードという言葉に魅了されていた時代もあった。いまでは,距離的に近くはないが,関心ある人が簡単に新疆を訪問できる。現地を訪れてからウイグル語に関心を持つようになった人も多くいる。

ウイグル語を学ぶための文法書や辞書はまだまだ数が少ない。初心者が学べ適切なウイグル語初級文法書もない。辞書については,近いうちにいいウイグル語の辞典が市販される予定である。ウイグル語学習の環境はこれからやっと整っていく。

中国北京で出版されたウイグル語の文法書がある。これは教科書としては大部なものである。読解力をつけることに重点がおかれている。初級を終えた人にとって,読解力をつけるのに役立つ。ウイグル語・日本語辞典が出版されたときに,これを引きながら利用すれば,ウイグル語の読解力が身につくであろう。

ところで,中国では漢族の一体誰がウイグル語を学ぶのであろうか。この書籍を購入した北京一番の繁華街にある王府井書店には,実用書や教科書を購入する中国人(漢族)はたくさんいるが,少数民族の言語の棚を見る人はいつもいない。漢族は少数民族の言語や文化に関心がない。中華思想からか,少数民族を外夷と見なしている。漢族は少数民族が漢語(中国語)を学ぶべきと思っているから,少数民族の言語を学ぼうとは全く思っていない。例えば,日本人にとってウイグル語は外国語の一つであっても,漢族にとってはウイグル語は外国語ではなく,一層関心がない。

日本では中国の少数民族言語を学ぶのは,純粋に興味関心などからである。中国では少数民族を統治するために学ぶ,少数の漢族(共産党や公安関係者)がいる。そういう漢族のために,この本は利用されるのであろうか。中国ではそういう利用目的があるにせよ,日本ではウイグル語を学ぶ道具として平和的に利用させてもらえる。