廣瀬徹也著  『テュルク族の世界』(東洋書店)

テュルク族の世界―シベリアからイスタンブールまで (ユーラシア・ブックレット)

テュルク族の世界―シベリアからイスタンブールまで (ユーラシア・ブックレット)

著者は初代アゼルバイジャン駐在日本大使を最後に39年間の外交官生活を終えた。トルコ語の専門官であった。外務省はアゼルバイジャン語がトルコ語に近いということで,廣瀬大使が誕生したのであった。外務省本省にあっても初代の新独立国家室長(現在,中央アジアコーカサス室長)も歴任した。トルコのみならず,中央アジアコーカサスの外交に携わった。

元外交官が生活・勤務経験に立って,著者が重要と感じてきたことを多少私見も交えて,幅広く論じている。著者は読者が気楽に読んでいるうちに,テュルク族を軸として西アジア中央アジアコーカサス地域全体の歴史と現状への理解を深めてもらうことを意図して本書を著した。この意図は成功していると思う。

著者は外交官生活の大半をトルコで過ごしている。トルコ語研修も3年間受けている。いまトルコに関して多くの書籍が出版されているが,内容的に軽いものが多い。外交官から見たトルコ外交や政治など,我々が知り得ないトルコ外交の裏面を書いた本を出して頂きたいと思う。